ハネノネ
ハネノネ
見慣れない人が来た。
閉じ込められたこの部屋に珍しく客人が訪れたのだ。
喉元に埋め込まれた翻訳機が皮膚の奥で色を残している。
多分、異星人だ。
その中年ほどの男は笑った。
「猛毒を放つ人種っていうのは、君のことかい?」
返事をせずに頷いた。
“猛毒を放つ人種”
そう言われ、わたしは忌み嫌われていた。
毒から隔離するために、みんなはわたしをこの檻のような部屋に閉じ込めた。
なので客人など滅多に来ないのだが、名も知らぬこの男は、突然わたしの目の前に現れた。
男は目を細め、柔らかく笑った。
「君の放つ毒は綺麗だね。とても人を殺すものとは思えない。」
人を殺すもの
人々の恐怖心を煽ることしかできない、この非生産的なものが嫌いだった。
なので残念ながら、褒められても嬉しくないのが正直な感想だった。
みんなコレを恐れ、嫌う。
いっそのこと、わたしを殺してしまえばいいのに。
しかしみんな、殺すことの見返りを恐れ、殺してさえしてくれない。
とんでもない生き地獄だ。