ハネノネ
なんとなく姉に聞いてみた。
「コウスケの言う“天使”って、なんだと思う?」
「多分、恋人のことじゃないかしら。恋人が自分を同じところに連れて行こうとしてる幻覚を見てるんだと思う。」
“天使”
羽根が生えた発病者は、確かにおとぎ話で見た天使のようだった。
正直なところ、初めて見た時「こんなに美しい凶器があるのか」と、半ば見惚れていた。
姉の意見に納得し、コウスケに向かって小さく呟いた。
「早く、いけるといいな。天使のところ」
コウスケの体がビクッと震えた。
恋人に先に逝かれ、精神を壊してまでひとりで生きながらえるのは、さぞかし辛いだろう。
コウスケを人一倍苦しめるその病が、早くお前を蝕んで、あの世で恋人と幸せになればいいのに。
これ以上、そんな友人の姿は見たくない。
そのまま僕はコウスケのアパートを後にした。