ハネノネ
薬
私がコウスケの部屋に入った時、すでにコウスケは息を引き取っていた。
外傷もなく、原因は不明。
過度のストレスによるものかとも思ったが、コウスケの顔は眠っているかのように穏やかだった。
こんなに穏やかな顔の彼を、初めて見た。
寝てるときでさえ“天使”に怯えていた。
そんな彼が、こんなに幸せそうに眠っている。
私はコウスケを、救うことができたんだろうか。
“病の進行を遅らせる薬”
言葉通り、私は耳を疑った。
ハネに関する様々な文献に目を通したが、そのような単語は見たことがない。
突然、大きな羽根を生やしたナキ。
その羽根で空に飛んでいくなんて、有り得ない現象だ。
彼女は本当に、“ただのハネの病の少女”なんだろうか。
記憶喪失ではないのは確実だろう。
そして羽根による神経の侵食の進行は、羽根の大きさに比例する。
自分の体よりも大きな羽根だったら、きっと死ぬのは一瞬だ。
ナキは、何者?