ハネノネ
傷にそっと触れると、傷口付近は腫れあがっていた。
生前はきっと熱も持っていたんだろう。
この刺された傷がトラウマで、私が髪を切ってやろうと用意したハサミをあれほど恐れたのか、となんとなく思った。
コウスケの死
悲しくないはずないのに、“薬”という新発見の存在を調べるのに夢中だったなんて、きっと私は狂っていたんだと思う。
コウスケの傷口から採取した血液で成分を調べ、薬の開発に励んだ。
これで、私もユウヤも生きていける。
私の存在が認められて、世界も救うことができる。
そのときに、ナキにすべてを聞こう。
私の知らないハネのことを。
それからどれほどの時間を、部屋に籠もり、開発に費やしたのだろう。
もう、手遅れだとも知らずに。