ハネノネ
僕が目を開けたとき、町はより一層ハネに覆われていた。
「ユウヤ」
体をあげると、隣でナキが心配そうに僕を見ていた。
あのキラキラと輝いたハネの中で、記憶は途切れていた。
てっきりあのまま死ぬのかと思ったが、まだ生きているみたいだ。
「ごめんなさい、気持ちをコントロールできなくて」
「いや、俺こそ…」
ナキの気持ちも考えずにカッとなった。
あの僕が降らせたのも同然のハネの吹雪で、数少ない生き残りがどれだけ発症したのだろう。
「でもよかった。ユウヤの目はまだ普通の色。発症してない。」
「…え?」
あれほどのハネに包まれて、
まだ発症していない?
先ほどの強風でマスクももうどこかへ飛んでいったようで、僕は今マスクもしていないのに、
日常生活の中でさえ発症してしまう人がいるのに、
「なんで…」
「知りたい?」
ナキの表情が強いものに変わった。
きっと、口げんかを始める前にしたナキの話の続きになるのだろう。
「…わたしの話、聞いてくれる?」
少し躊躇ったが、僕は小さく頷いた。