ハネノネ
「ユウヤがまだ生き続けているのは、多分ユウイチのおかげ。」
ナキはとても淡々と話を進める。
まだ整理がついてないのに、と思いながらも、ナキは放った言葉が耳について思わず顔をあげた。
「ワクチンっていうのはね、毒をやっつけるもののことではないの」
「どういう…」
「毒に対する免疫をつけるために、発症しない程度の微量の毒を体にいれるの」
僕は、医療のことなどさっぱりわからない。
ただ漠然と、“ワクチンは予防、薬は治療”と思っていた。
「日常生活での空気感染はないけれど、密室で一緒に過ごすと、微量の毒が充満しちゃうから」
父は日本に帰ってきてからずっと家で過ごし、まったく外へ出なかった。
だから僕も姉も、ちょっとやそっとじゃ感染しなかったんだ。