雨に恋した華 〜君とずっと〜
椅子に座ったままなのに力が抜け切ってしまったあたしは、虹ちゃんに体を預けるようにグッタリとしていた。


彼はあたしの体を支えるように優しく手を添えて、もう片方の手でズボンのポケットから財布を取り出した。


ぼんやりとしたままのあたしの視界の端に、財布から一万円札を出す虹ちゃんの姿が入って来る。


「これ、俺と紫の分です」


どこか申し訳なさそうに言いながらそれをテーブルに置いた彼は、グッタリしたままのあたしを労(イタワ)るように椅子に掛けてあったコートを着せた。


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