王子様の甘い誘惑【完】

「……今日はお昼抜きかぁ」


「え?何で?」


不思議そうな表情のユキ先輩に事情を説明すると、先輩はニコッと笑ってパンを差し出した。


「これ、あげるよ」


「でも、これをもらっちゃったらユキ先輩の食べる物が……――」


あたしが言い終える前に、ユキ先輩はあたしの手にパンを乗せた。


「大丈夫。俺は食堂に行って何か食べるから」


「だけどそんなの悪い……――」


「じゃあね」


ユキ先輩は一方的に別れを告げて、クルッと背中を向けて歩き出す。


「……ユキ先輩、ありがとうございます!!」


「どういたしまして」


大声でそう叫ぶと、ユキ先輩は後ろを向いたまま軽く右手を上げて応えてくれた。

< 133 / 425 >

この作品をシェア

pagetop