王子様の甘い誘惑【完】
「……今日はお昼抜きかぁ」
「え?何で?」
不思議そうな表情のユキ先輩に事情を説明すると、先輩はニコッと笑ってパンを差し出した。
「これ、あげるよ」
「でも、これをもらっちゃったらユキ先輩の食べる物が……――」
あたしが言い終える前に、ユキ先輩はあたしの手にパンを乗せた。
「大丈夫。俺は食堂に行って何か食べるから」
「だけどそんなの悪い……――」
「じゃあね」
ユキ先輩は一方的に別れを告げて、クルッと背中を向けて歩き出す。
「……ユキ先輩、ありがとうございます!!」
「どういたしまして」
大声でそう叫ぶと、ユキ先輩は後ろを向いたまま軽く右手を上げて応えてくれた。