王子様の甘い誘惑【完】
「いらない。これは、お前が食え」
「え……?でもそれじゃ、蓮の分が……」
「早退してどっかで食う」
でも、あたしには今朝早起きして作ったおにぎりが……――!!
「って、ちょっと待ってよ!!」
「じゃあな」
蓮はそれだけ言い残すと、一人空き教室から出ていった。
「……何なのよ……!!」
どうしてあたしにこのパンをくれるの?
あたしにわざわざ何か買って来いって頼んだくせに。
「あたし……蓮が分かんないよ」
冷たいことを言ったかと思うと、急に優しくなるし。
蓮が何を考えてるのか、全然分かんない……――。
「……このパン……どうしよう」
あたしは袋を胸に抱えながらハァと溜息を吐いた。