王子様の甘い誘惑【完】

「いらない。これは、お前が食え」


「え……?でもそれじゃ、蓮の分が……」


「早退してどっかで食う」


でも、あたしには今朝早起きして作ったおにぎりが……――!!


「って、ちょっと待ってよ!!」


「じゃあな」


蓮はそれだけ言い残すと、一人空き教室から出ていった。



「……何なのよ……!!」


どうしてあたしにこのパンをくれるの?


あたしにわざわざ何か買って来いって頼んだくせに。


「あたし……蓮が分かんないよ」


冷たいことを言ったかと思うと、急に優しくなるし。


蓮が何を考えてるのか、全然分かんない……――。



「……このパン……どうしよう」


あたしは袋を胸に抱えながらハァと溜息を吐いた。


< 136 / 425 >

この作品をシェア

pagetop