王子様の甘い誘惑【完】
あたしはコクリと頷いて、先輩の前の椅子に腰を下ろした。


「ユキ先輩にもらったパンを蓮に渡せなくて。だから返しに来たんです」


呼吸が落ち着いた頃合いを見計らってそう切り出す。


「だからってわざわざ走って返しに来ることないのに。疲れたでしょ?」


「いえ!でも、ユキ先輩……もう食べ終わっちゃいましたよね?」


ユキ先輩の前の空のお皿に気付いてガックリと肩を落とす。


このパンは買いとらないとだよね……。


「あの、これあたしが買います。いくらですか?」


制服のポケットに手を突っ込んだ瞬間、


「これは俺が理生ちゃんにあげた物だよ」


ユキ先輩は優しく微笑みながらそう言った。



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