王子様の甘い誘惑【完】
「今、選べよ。お前が行くなって言うなら、行かねぇから」
「……」
どうしよう……。
色々な感情がごちゃ混ぜになって自分の気持ちがよく分からない。
蓮の茶色い瞳が急かす様にあたしに向けられる。
「黙ってちゃ分かんねぇだろ」
蓮は低い声でそう言うと、あたしの顎をクイッと上に持ち上げた。
バチッと至近距離でぶつかりあった視線。
自分の瞳に映った蓮の姿があまりにも眩しくて。
やっぱり、あたしは蓮に不釣り合いだよ……。
それに……――。
「……あたし……蓮の彼女にはなれないよ」
あたしは蓮の家政婦だもん。
家政婦だから学校にも通っていられるし、こうやって何不自由ない暮らしを送れている。
きっと、これ以上を望んじゃ……いけないんだ。