王子様の甘い誘惑【完】
でも、しょうがないよね。
だって……あたしは蓮の家政婦だもん。
あたしは蓮にお金で買われたようなもの。
そんなあたしが蓮の彼女になるなんて、ずうずうしいよ。
だけど、どうしてだろう。
どうしてこんなに苦しくなるんだろう。
自分の気持ちを抑えようとすればするほど、蓮への想いが溢れてしまう。
「蓮のバカ!!……早く帰ってきてよ!!」
どうしてこんなにあたしを苦しめるのよ。
蓮の家政婦にならなければ、こんな気持ちにならなかったのに。
そうすれば蓮を……
……――こんなにも好きにならずにすんだのに。
目を閉じると、蓮の笑顔が瞼に浮かぶ。
あたしは首をブンブンと横に振って蓮の残像を自分の中から追い払った。