王子様の甘い誘惑【完】
「……匂いのわりに……全然酔ってないみたい」
うちの家族はお父さんもお母さんもお酒が弱い。
深夜、お父さんが会社の飲み会を終えて帰ってきた日は、トイレを占領される。
『オエェー』とか『ウエェー』とか、トイレから聞こえてくる獣のような声に何度耳を塞いだか。
その点、蓮はお酒が強いみたい。
リビングにある給湯パネルが点滅している。
バスルームに直行する余裕があるなんて大したものだ。
「女物の香水の匂いを漂わせてるより、お酒のがまだましだよね」
あたしはソファの上のクッションをギュッと抱きしめてポツリと呟いた。