王子様の甘い誘惑【完】
「どうして蓮を好きになっちゃったんだろ……」
最初は悪い印象しかなかったのにな。
強引だし、意地悪だし、エッチだし。
すぐにキスばっかりしてくるキス魔でもある。
「契約その3~とか何とか言っちゃって」
自分がすべて正しいみたいな顔してさ。
それなのに、あたしが作るご飯を喜んで食べて。
あたしは蓮の言う「うまい」っていうたった3文字言葉がすごく嬉しくて。
その言葉を聞く度に、もっと美味しいご飯を作ってあげたいなんて思って。
「……あたし、家政婦でいるよ。そうすれば、蓮のそばにずっといられるから」
鼻の奥がツーンッと痛んで、胸に熱いものが込み上げてくる。
あたしはその感情を押し殺す様に唇を噛み締めた。
そしてそのまま、蓮の胸に顔を押し付けてゆっくりと目を閉じた。