王子様の甘い誘惑【完】
「俺、理生ちゃんみたいな子がタイプなんだ」
大きな手の平から伝わる先輩の熱。
触れられている頬がジンジンと熱くなる。
「あの……先輩……冗談はやめてくださいよ」
「冗談じゃないっていったら、困る?それとも喜んでくれる?」
先輩の大きな瞳があたしを捕えて離さない。
どうしよう……。きっとからかわれているだけだよね?
「困るみたいだね」
すると、先輩はクスッと笑ってあたしの頬から手を離した。
「俺は蓮みたいに強引じゃないから」
ユキ先輩はもう一度あたしの頭を撫でて、ゆっくりとした足取りで旧校舎を出ていく。
あたしはその後ろ姿を見つめながら、いまだに熱の残る頬にそっと手を当てた。