王子様の甘い誘惑【完】
目をつむったままのところを見ると、まだ寝惚けてるみたい。
よかった……。
ホッと胸を撫で下ろしているのも束の間、あたしは引っ張られた拍子で蓮の横に倒れ込んだ。
蓮は長い腕であたしの体をギュッと抱きしめる。
「蓮。離してくれないとお弁当作らないよ?」
「……」
「あたし、二度寝しちゃうよ?」
「……」
もう少しだけ、この温もりを感じていたい。
人肌がこんなに温かくて安心できるものだって知らなかった。
あたしは蓮の温かい胸に顔を埋めながら再び目を閉じた。