王子様の甘い誘惑【完】
第九章 ヤキモチ
放課後。いつものように帰り支度をしていると、「愛沢さん」と誰かに名前を呼ばれた。
「……ん?」
誰があたしを呼んだんだろう。
辺りをキョロキョロと見渡しながら、声の主を探す。
「愛沢さん、ちょっといい?」
「あっ……うん」
声の主は教室の扉から顔を出して手招きしている。
黒髪でほんのり日焼けしている男の子。
背はあんまり高くないけど、顔はそこそこ整っている。
でも、その男の子に見覚えはない。
ってことは、同じクラスじゃないのかな……?
「悪いんだけど、ちょっとついてきて?」
教室の扉に背中を預けている男の子に近付いていくと、男の子は少し照れくさそうにはにかんだ。