王子様の甘い誘惑【完】
教室に戻ってからも、その不安は募っていくばかり。
だけど、サヤとの約束もある。
ユキ先輩のクラスのお化け屋敷にいくって約束したんだ。
「……――サヤ、そろそろユキ先輩の教室行く?」
サヤの姿を見つけて駆け寄る。
正直、ユキ先輩と今は顔を合わせたくない。
だけど、サヤには……その理由を話すわけにはいかない。
「……サヤ?」
その時、サヤの表情が強張っているのに気が付いた。
「ごめん。あたし……ちょっと、具合悪くて。保健室行ってくる」
「それなら、あたしもついていくよ!」
「ううん、いい。一人で大丈夫だから」
サヤは力なくあたしに微笑みかけると、そのまま教室を出ていった。
「サヤ……」
具合悪いって……一人で大丈夫なのかな?
ついていってあげたかったのに、サヤはそれを拒否した。
……ハァ。何もかも、全然うまくいかない。
あたしはどんよりとした気持ちを抱えながら、溜息をついた。