王子様の甘い誘惑【完】
「突然、ごめんなさい。だけど、どうしても一度ちゃんと話しておきたくて」
「……はい」
近くの喫茶店に入って、注文した飲み物が届くと愛子さんが口を開いた。
茶色い髪の毛を緩く巻いている愛子さん。
文化祭の日より、少しだけ大人びて見える。
「話っていうのは、もう分かってると思うけど……蓮のことなの」
あたしと愛子さんの共通点といったら、蓮だけ。
蓮の話をされるって分かっていて愛子さんについてきたのに。
それなのに、今すぐこの場所から逃げ出したくなる。
愛子さんの話を遮る様に耳を塞いでしまいたい。
何を言われるのかは分からないけど、きっといい話じゃないって何となく分かっているから。
「……はい」
あたしはテーブルの上のレモンティーを口に含んで気持ちを落ち着かせた後、小さく頷いた。