王子様の甘い誘惑【完】
蓮は黙って煙草をくわえると、火をつけた。
白い煙がふわふわと風に流されて消えていく。
何を言われるんだろう……。
そう考えると、不安で胸が締めつけられる。
『別れよう』
『もうお前のこと好きじゃないから』
もし蓮にそんなことを言われたら、あたし……
どうしたらいいんだろう……。
「話っていうのは、愛子のこと」
「……う…ん」
分かっていたけど、蓮の口から愛子さんの名前を聞くと不安になる。
ドクンドクンと不快な音を立てる心臓にそっと手を当てる。
大丈夫、大丈夫。
何度も自分を落ち着かせるように、心の中で呟いた。