王子様の甘い誘惑【完】
「でも、俺、どうしても理生は譲れねぇんだよ。ユキにも他の男にも」
「蓮……」
「愛子は昨日、留学先に戻った。理生に、ごめんって謝っといてくれって」
愛子さんが……留学先に?
あたしに、ごめん?
それって……どういうこと?
愛子さんはあたしに蓮を譲ってくれって頼んでいたのに……。
「あいつもちゃんと分かってくれたから。俺がどんなに理生が好きかって。だから、もう何の心配もいらねぇよ」
「それ……本当?蓮は愛子さんじゃなくて、あたしでいいの?」
念を押してしまうのは、自分に自信がないから。
元カノの愛子さんはあたしよりよっぽど可愛くてスタイルが良くてお金持ちで。
あたしは、愛子さんに何一つ勝てるところがないから……。
「理生がいいから愛子を必死で説得したんだろ。それなのに、お前は……――」
蓮が言いたいのは、この間の喧嘩のこと。
あたしは「ごめんね……」と震える声で蓮に謝った。