王子様の甘い誘惑【完】
「……――理生」
蓮は優しくあたしの名前を呼ぶ。
頬に触れるその手があまりにも温かくて。
あたしは思わず息を飲んだ。
「なぁ、あんまり怒るなって」
「……っ!!」
どうして……?どうして急に優しくするの……?
至近距離でぶつかり合う視線。
茶色い瞳にまっすぐ見つめられていると、その瞳に吸い込まれてしまいそう。
鼓動が速くなって、自分の心臓の音が蓮に届いてしまいそうな位大暴れしてる。
さっきまであんなに苛立っていたのに。
それが今は、嘘のように穏やかな気持ちになっていた。