王子様の甘い誘惑【完】
「そんなに俺のこと嫌いか?」
さっきの強引で意地悪な蓮とは想像もつかないほど、優しい表情。
こんな顔……出来るんだ……。
柔らかい笑みを浮かべる蓮は、やっぱり王子様そのもので。
この世にこんな綺麗な顔の人がいたなんて……。
見つめられると、逆らえない。
見つめられる度に、心臓がどうかしちゃいそうになる。
あたしに見せた二つの表情。
本当の蓮は……一体どっちなの?
「うちに帰ろう」
小さい子供をあやすようにそう言うと、蓮はあたしの手をそっと掴んで立ち上がらせた。