王子様の甘い誘惑【完】
「連絡してこない時点で、理生ちゃんの出す答えは分かってたよ」
「ユキ先輩……」
「結局、また蓮にとられちゃったな……」
「ごめんなさい……」
ポリポリと頭をかきながら空を見上げたユキ先輩。
あたしはその綺麗な横顔をぼんやりと見つめた。
「俺、この前愛子会って、聞いたんだ。蓮が愛子の為に別れようって言ったとか……今までのこと全部……」
あぐらをかいている先輩。
膝の上に乗せられている拳が小刻みに震えてる。
「あいつ、俺がどんなに酷いこと言っても何にも言い返してこなかったんだ。言い訳もしなかったし。話してくれれば、俺は……――」
ユキ先輩の想いが痛いほど伝わってきて。
だけど、あたしが背中を擦ることはできない。
ただ相槌を打ちながら、先輩の話に耳を傾け続けた。