王子様の甘い誘惑【完】
「……蓮は不器用だけど、本当はすごいいい奴だからね。あいつがもっと嫌な奴なら、どんな手を使ってでも理生ちゃんを振り向かせようとするだろうけど」
先輩はふっと笑ったあと、決意したようにあたしの瞳を真っ直ぐ見つめた。
「俺、理生ちゃんのことちゃんと諦めるから」
「ユキ先輩……」
「だけど、蓮と別れるようなことがあったら、承知しないよ」
「……はい。絶対に、別れません!!」
「よしっ。じゃ、そろそろ帰ろうか」
先輩はそう言うと、勢いよく立ち上がった。
それにつられて慌てて腰を持ち上げると、
「お前ら、二人で何やってんだよ」
タイミング良く屋上の扉が開いて、不機嫌そうな蓮が顔を覗かせた。