王子様の甘い誘惑【完】
それに、自分で言うのもなんだけど、家事全般は得意で。
料理も洗濯も掃除も、同じ年代の女の子よりはうまくやる自信がある。
「……あのさっ、分かったからとりあえず手を離してくれる?」
手を繋いでいるのが嫌とか、そういうんじゃない。
むしろ、温かい蓮の手の平はとても心地よくて。
だけど、あたしの心臓は未だに激しく暴れ続けていて。
その音が手の平を通じて蓮に届いてしまう気がした。
あたしがそうお願いすると、蓮の顔から柔らかい笑みが一瞬にして消えた。