王子様の甘い誘惑【完】
「入るのが嫌ならそこで待ってて?あたしが適当に買ってくるから」
店先のカゴを手に取りながら蓮を横目で睨む。
すると蓮は、余裕そうな表情であたしを見下ろした。
「へぇ〜……。一人でも大丈夫なわけ?」
「別に大丈夫だけど……なんで?」
スーパーで買い物するくらい、小学生だってできるもん。
そう答えると、「金持ってんのかよ」と蓮はあたしを鼻で笑う。
「あっ……――」
そういうことか。
悔しいけど、お金は……――。
「……持ってない」
「貸せ」
あたし、帰りの電車賃すら持ってないんだった。
財布のひもを握っている蓮は、あたしからカゴを奪うと、スタスタと店の中に入っていった。