透明な翼
「じゃあわたし作るよ! 何食べたい?」

翠は意気揚々としている。

僕も丁度お腹が減ってたし、特に断る理由もなかったから、

「ありがとう。 何でもいいよ」

そう素直に言った。

すると嬉しそうに鼻歌を歌いながら冷蔵庫の中をチェックし始める。

「へぇ~結構ちゃんとした食材揃ってるのね」

「まあね」

レトルトや弁当を買ってくることもあるけど、ほとんどは自炊している。

幼い頃から両親が不在のことが多く、いつもさくらにご飯作ってやってたから結構得意。

もともと料理は嫌いじゃないし。

「えっと……フライパンは……っと」

「今日は僕も手伝うよ」

言いながら立ち上がると、翠は慌てたように顔を上げた。

「ダメ! 家事はわたしの仕事だから、幾斗君は座ってて!」

いや、それじゃ僕が押し付けてるみたいじゃねーか。

別に頼んだだけで、嫌なら断ってもいいんだぜ?

「でも翠、このキッチン使い慣れてないだろ? 物の場所も教えないと」

「あ……」

ハッとしたように少し考え込む。

しばらくしてから顔を上げておずおずと呟いた。

「それじゃあ今日だけお願いします……」

そんな翠があまりにも可愛くて思わず吹き出した。

「ははっ! 了解。 それじゃ今日だけな」

くしゃっと翠のさらさらの髪を握った。

「そいじゃ、やるか!」

「うん!」




翠side

「そいじゃ、やるか!」

「うん!」

……て、さっきはああ言ったものの、やっぱり申し訳ないよ。

幾斗君は優しい。

でもそれに甘えちゃだめなんだ。
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