透明な翼
「ところでよぉ、お前明日何の日か知ってるか?」

明日?

何の日だっけ……

別に何もねーと思うけど。

「いや、知らないっす」

「だろーな。 実は明日が平岡の誕生日なんだよ」

……は!?

明日って、えぇ! まじかよ!!

「そーなんすか……?」

「あぁ。 経歴書に書いてあってな」

明日……5月27日が翠の誕生日?

明日は丁度土曜日で仕事は休み。

てか店長、それを僕に教えて一体何をしろと?

「お前、ちゃんと祝ってやれよ!」

はいいいい!!??

なんで!

何がどうなってそうなるんだよ!!

「何で俺がッ」

「彼女の誕生日も祝ってやれないのかよ」

「彼女じゃない!」

前言撤回!

やっぱコイツ全然いい人じゃない!

「せっかく休みなんだから、デートくらい誘ってやれよ」

「だから何で俺が……」

「平岡のやつ、たぶん誕生日なんてろくに祝ってもらえなかったんだろーなー」

「は?」

何で? 仲のいい母さんがいたんだろ?

僕の疑問に答えるように店長が言った。

「母子家庭だぞ? プレゼントなんて買ってもらえるわきゃねーだろが」

あっ……

「だからこれからはお前がちゃんと祝ってやりな」

……やっぱりこの人はいい人なのかもしれない。

さっきはすんませんでした。

僕は心の中で謝罪した。

「……分かりました。 考えておきます」
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