図書室の君【短編】



カントを数ページ読んで
私はつい
へたってしまう。




だめだな。
今日は集中力が続かないや。




………だって。




今日は、
私たち以外の生徒がいない。




静かな夕暮れの中、
彼の本のページを繰る音だけが
辺り一面の音を支配している。




ついには図書委員も
席を立ってどこかに行ってしまった。




………ああ、どうしよう。




こんな状況、
二年間の中ではじめて。





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