図書室の君【短編】



そして私の座る椅子の横に
彼は立つ。




「なんのためにこの二年間、
好きでもない哲学を
読み続けたと思ってるんですか」




少し、眉間にしわを寄せて
彼は苦しげに私を見つめる。




「あ、あの………?」




なにを、彼は言っているの。




その彼の手が
私の頬にかかる。




くいっと
私の涙を拭って、
切なげに私を見遣る。




彼が触れている部分が
熱をもったように熱く、
ひりひりする。





「忘れもしない、
二年前の今日だ。」





彼の唇が
言葉を紡いでゆく。




< 18 / 23 >

この作品をシェア

pagetop