図書室の君【短編】
そして私の座る椅子の横に
彼は立つ。
「なんのためにこの二年間、
好きでもない哲学を
読み続けたと思ってるんですか」
少し、眉間にしわを寄せて
彼は苦しげに私を見つめる。
「あ、あの………?」
なにを、彼は言っているの。
その彼の手が
私の頬にかかる。
くいっと
私の涙を拭って、
切なげに私を見遣る。
彼が触れている部分が
熱をもったように熱く、
ひりひりする。
「忘れもしない、
二年前の今日だ。」
彼の唇が
言葉を紡いでゆく。