図書室の君【短編】
「一目ぼれだったんだ。
だからつい
君の向かい側の席に腰を下ろした」
「うそ……」
まさか、そんな。
信じられない。
あなたが私に、恋してた?
「君とどうにかして話したくて
興味も無い哲学を
二年間読みあさった」
自嘲ぎみに彼は
バカな男だろ、と言って笑った。
その言葉に私はぶんぶんと
首を振った。
「そんなことないです!!
私のほうが、バカな女。
あなたが向かい側に座った瞬間、
恋に落ちたのは私のほう」
その言葉に彼は息を呑み、
私はゆっくりと彼を見上げる。
そして頬にふれる手に
自分の手をそっと添える。