Beats! ~美歌と奏楽の恋物語~
「や、何とも思ってないわけじゃないか。
好きだよ、奏楽のこと。
でもそれは、幼馴染として。
仲間として好きなの。」
…私は、下げていた頭をゆっくりと上げた。
「“好きだった”って言ったでしょ?
過去形。
今、あたしが好きなのは、謡だよ。」
「…お…れ…?」
謡くんが、表情をかえず、でも、信じられないという様子で、花音ちゃんの方を見た。
「あのね、謡。
謡はよく…“無理して笑ってる”って言うけど、そうじゃないんだよ?
あたし、謡といる時、本当に笑ってた。
謡があたしを笑顔にしてくれたんだ。
謡の優しさが、あたしを救ってくれたの。
謡がいなかったら…きっと今もあたしは、奏楽を想って泣いてたよ。
だから…ありがと。
あたし、謡のこと好き。
大好きだよ。
無愛想だし、不器用だけど、優しくて…
あたしを笑顔にさせてくれる、そんな謡が、あたしは大好き。
本当に…ありがとう。」
「…か…の…ん…」
そう言った謡くんの顔は、少し笑ってるように見えた。
そんで、謡くんの目には、涙があふれて、頬にこぼれ落ちていた。
「ごめんなぁー花音!
でも、俺の好きなヤツは、美歌なんだ。」
ちょっと、奏楽!
こういう時に何言い出すの!?
「バーカ!
知ってるわよっ
生憎だけど、あたしの好きなヤツも、謡だけなんですよーっだ♪♪」
笑顔であっかんべーをする花音ちゃん。
本当だね。
花音ちゃん、笑ってるよ。
全然辛そうじゃない。
花音ちゃんは、今、すっごく笑顔だよ。