Beats! ~美歌と奏楽の恋物語~


「鈴鳴ちゃんっ!」


屋上に来たら、鈴鳴ちゃんが一人居た。

目を真っ赤にした、鈴鳴ちゃんが。

今にも泣きだしそうなのに、歯をくいしばって、泣くのを我慢している鈴鳴ちゃんが。


「…何しにきたのよ、あんた達。
もう授業始まってるんじゃない?」


鈴鳴ちゃんと比べたら、授業なんてどうでも良いんだよ?

鈴鳴ちゃんは、私の仲間だし、
それに、私も鈴鳴ちゃんの気持ち、少しは分かるんだ。



好きな人を取られたくないのに、素直になれないって、気持ち。



「鈴鳴ちゃん…鈴鳴ちゃんは、宙音のこと、好きなんでしょ?」


「それなら、本当のこと、いったほうがいいって!」


奏楽も、私に続いてそう言った。


「誰があんなやつのこと…
好きになるわけないでしょ。」


それ、本当の気持ちじゃないよね。

鈴鳴ちゃんを見てたら、わかるよ。

鈴鳴ちゃんは、きっと、私よりも素直じゃない。

思ってることと、反対のこと言っちゃうんでしょ?



それじゃダメだよ。

言葉にしなきゃ、相手に伝わらない。



私はそれが分かったけど、鈴鳴ちゃんは分かってない。

だから私が、分からせてあげなきゃ…。


「鈴鳴ちゃん、正直に…「ええ、そうよ!!」


鈴鳴ちゃんが、叫んだ。


「あたしは、宙音のことが好き。」


「だったらそれを、宙音くんに伝えなきゃ!」


「無理よっ!」


どうして…?

その、好き鳴ちゃんの本当の気持ちを、宙音くんにいったらいいんじゃないの?


「あたしが宙音のこと好きでも、
宙音はあたしのこと嫌いなの。」


「そんなこと、誰が言ったんだよ!?」


そう言ったのは、私でもなく、奏楽でもなく、
宙音くんだった。


宙音くん、来てくれた…


「俺は、鈴鳴のこと、嫌いなんて思ってねぇ。」


「嘘つかないで!」


「嘘じゃねぇよ!」




< 123 / 129 >

この作品をシェア

pagetop