――Rain
猫は近寄っただけで逃げる

ごろごろ言って甘えてきたらいいのに爪を立てる

「鈴を殺したりしないよ」

とりあえずの止血を施した細い腕を放してやる

こんな頼りない腕で、銃を握るのか

「なんでそんなに怯えてる?」

鈴の真っ赤な瞳が視線を預けてきた

にらみつけるような視線だが不思議と怖くない

「試したりするなよ」

ただ黙って聞いている鈴

気持ちはひどく穏やかで、ゆっくりと救急箱を片付けた


うちの猫もやっぱり周りと同じ

警戒して、怯えて、威嚇してる

こちらには敵意なんて無い

でも近寄るだけで一目散に逃げていく

信用までは突然求めない

だから、逃げていくな



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