――Rain
「……っあああぁぁっ!!」

先ほどまで息だった声が
今度は音になって飛ぶ

鈴はこちらに手を伸ばして
体を引き寄せた
抱き寄せられた形になる

「鈴、鈴っ」

何度も名前を呼んだが様子がおかしかった
きつく目を閉じて
手にも力が入って、抜け出せない

「…っぁだ…」

鈴の体は震えていて
知らない鈴に心底戸惑った
痛いくらい締め付けるように抱きしめられる

視線の流れたテーブルの先に散らかった錠剤が見えた
横には水が少し残ったグラスもある
薬服用の記憶は無いから、鈴なのだろう

「痛っ」

悠長に思考を働かせていると声をあげるのはこちらになった

鋭い痛みが背中をビリッと走ったのだ
どうやら鈴の手に爪をたてられたらしい

「鈴、起きろっ」

四肢の自由は聞かないので叫ぶ
鈴は頭を何度も横に振ったが、問いかけの答えでは無さそうだった

突然のことに頭がついてこない
背中の痛みがじくじくと増していく

猫に爪をたてられるってこれか
最も、こいつは野良猫なんだがな
< 17 / 18 >

この作品をシェア

pagetop