――Rain
どうやら拾った猫はとんでもない野良猫だったらしい

この21世紀の日本に拳銃持ち歩く若者なんて居るんだ

しかも頭に当てられてるのも拳銃だとしたら持ってるのは2丁以上

などと色々考えていると鈴がゴリッと銃口を頭に押し付けた

「雨は好きなの
人を殺しても、汚い血を流してくれるから
雷なんて鳴ってたらもっといい
銃声も掻き消してくれる」

振り向けないので鈴の表情は分からなかった

鈴の声、雨の音

それからどこかで車のクラクションの音が鳴ってる

部屋の外はいつもの、退屈すぎるくらいの日常のままだ

流行りのラブソングも延々と垂れ流されていることだろう

「ホイホイ知らない人を部屋に誘うもんじゃないよ」

後頭部の銃口が外された

鈴は床に転んだ銃を拾い上げてそれを眺めた

「…なに?」

その姿を眺めていると怪訝そうに鈴が言った

なんでそんな不機嫌そうなんだか不思議なくらいだ

「いや…殺さないのかと、思って」

体は変に脱力していた

鈴はジーンズだけはいてバスタオルで頭をガシガシ拭いていた

「殺されたいの?」

鈴がニヤっと笑う

笑った顔は意外に幼くて驚く

「そうゆうわけじゃないけど…
あの状況なら殺されると思うよ普通」

笑えることに、足が動かない

膝が小さくガタガタ笑ってる

だってそうだろ

拳銃を突きつけられるなんれ人生で初めてだったんだ

「うん。普通ならバーンってやっちゃうんだけど
ちょうど寝るところも無いし
お腹も空いてるから」

サラっと言われたが、バーンってやっちゃいけないだろ

全くもって普通じゃない

しかし残念なことに、鈴は怖くなかった

むしろ興味なんかわいてしまった始末だ

銃を持った鈴の姿はまるで麻薬のように危険で魅力的だった

人間を見て美しさにゾクゾクするなんて知らなかった






こんな不思議で非日常的な鈴との出逢い
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