あの日にあった出来事
あれこれ考えていると、ダイニングの向こうのキッチンから甲高い声がした。

「音姫~お風呂沸いたわよ~」
「あっ、今行く~!」

言うまでもないが、母は料理が大の苦手だ。だから私はこうして、料理の得意な兄に作ってもらっている。

「静希が居るとほんと助かるわぁ~♪
ありがとね、静希。」
「いえ、当然の事をしたまでです。」

実をいうと、兄は母が苦手だ。いや、嫌っているという言葉のほうが正しいのかもしれない。

そして私も・・・母があまり好きではない。

大分前からそういう素振りを母に見せていたので、もしかしたら私も母に嫌われているかもしれない。

でもそんな事は私にとってどうでも良かった。

私にはただ兄が居ればそれだけで良かった・・・

「はあ・・・」

そんな事を考えながら、私は一人溜息をついた。

「・・・本当に、こんな気持ちで良いのかなぁ。」

「音姫、シャンプー切れてない?」
「うわっ!!お、お兄ちゃん!?」

その時、兄がお風呂のドアを開けて中へ入ってきた。

私は一瞬心臓が飛び出しそうになった。
< 11 / 15 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop