火星より愛を込めて
「イラッシャイマセ、ナニニイタシマショウカ?」

 マックの胸ぐらいまである先の丸まった円柱がテーブルの片端らで言った。

 来たのは、機能優先のウェイトレスロボだった。しかも耳障りなマシンヴォイス。肉声だと著作権料が取られるので最近また流行り出したらしい。

 この手の半自動化のレストランは、大概この手のウェイトレスロボを使っていた。

 人間のウェイトレスがいるのは、高級レストランぐらいである。

「マニプティのステーキとコーヒー、あとサラダの大盛りだ」

 マックがそう言うと、ウェイトレスロボは、さっさと行ってしまった。

 マニプティとは、火星で野生化したバッファローで、地球のものより2倍は大きいが、性格は極めておとなしい。

 マックは、料理を待っている間にデータの整理を始めた。

 持ってきたS・PACを開けて、ミニスクリーンを流れては消えるデータに目を通していた。

 5分経った。マニプティの分厚いステーキとボール1杯のサラダ、そしてコーヒーがテーブルに並べられた。

「さて、喰うかな」

 S・PACを閉じて、ステーキをナイフで切り、2、3切れ口に放り込んで食べた。

 コーヒーをひとすすりし、ドレッシングがたっぷりかかったサラダを頬張り、そしてまたステーキに取り掛かったときだった。
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