火星より愛を込めて
 背後で、チンピラの叫び声を聞いたような気がしたが、無視して加速させた。

 軽快なタービン音を響かせて、マックの乗った赤いエアカーは、メインストリートを上昇し、メガロポリス上空のスカイウェイを北上した。

 速度はすでに時速800キロに達している。

「ひゃっほー!ごきげんだぜ」

 見掛けによらぬ加速の良さに、マックは喜びながら、黒いエアカーを追った。

 比較的空いているスカイウェイを先行する黒いエアカーとの距離がみるみる縮まっていく。相手は、わざと減速しているようだった。

 あっというまに、黒いエアカーは、マックの右に並行していた。

 更に後方へ下がっていく。

「んなろっ、減速して逃げる気か?」

 そんなことを口にした途端、ぴたりと後ろについたエアカーを見て、マックは、嫌な予感がした。同時に、エアブレーキを展開し、機体を左下方へ流す。

 機体の直ぐ右上を不可視のパルスレーザーが突き進み、その先にあるビルの壁面を粉砕した。

「ちっ、ヘッドライトの中にパルスレーザー砲を仕込んでるとはまた古風な、ただもんじゃないな」

 そんなことを言っている間にも、2撃目が機体の右側面を嘗める。
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