火星より愛を込めて
 前方のエアカーは、さらに高度が下がった。

 機体もふらついている、速度もかなり落ち込んでいた。

 だが、それはマックも同じだった。どうやらパルスレーザーでやられた時に、ボディの破片がエンジンルーム内で踊りまくったらしい。

 いくら高度が下がっているとは言え、ここから落ちたらまず助からない。なぜなら、この機体の揺れは、ショックアブソーバーの破損によるらしいからだ。

「もう少しもってくれよ」

 マックは、前方の黒いエアカーを睨みつけながらこぼした。

 まるでシェイカーの中にいるみたいだった。しかし、相手のほうがもっと酷い状態らしい。エンジンからいまだ煙が出ている、自動消火装置が作動しないらしい。

 出し抜けに、両脇を占めていたビルの並木がとぎれた。

 メガロポリスの外縁部に抜けたのだ。

 途端に、黒いエアカーの落下速度が速くなる。

 そして遂に、ドーム状の巨大な建物の真上へ、時速300キロで突っ込んだ。

 その時、マックには判らなかったが、黒いエアカーは電装系が暴走し、パルスレーザーが、撃ちっぱなしになっていた。

「馬鹿め、俺を相手にするにゃあ百年早いんだよ」

 マックは、そのドーム状の建物にエアカーを寄せた。

 ドームの天井に大きな穴が開いていた。

 建物中にサイレンが響いていた。

 穴の中で、何かがエメラルドグリーンに輝いていた。

「げっ!まさかここ、シグマイト供給所?」

 マックは、信じられないと言う声で呟いた。

 そして、最初の小爆発が起きた。

 ドームの天井が半壊し、反応中のシグマイトが激しく輝いた。

「冗談じゃねぇ、これじゃ中和なんか無理だ、逃げよ」

 爆風で、木の葉のように揺れるエアカーを叱咤し、全速力で宇宙港へ戻った。

 エアカーで直接ドックに入っているジャッカルに横付けして、操縦室へ飛び込む。

 リビングで寛いでいたキムが上がって来た頃には、マックは慣性制御フィールドを全力展開しジャッカルを強制離陸させていた。

 わめき散らす管制官の声を無視し、ジャッカルは無許可でメガロポリス宇宙港を発進した。

 その数分後、メガロポリスは、シグマイトの爆発によって、その80パーセントが壊滅した。
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