火星より愛を込めて
 粒子ビームが岩を貫き、マックが飛び出したのを追うようにレーザーが浴びせられる。

 巻き上げられた砂や埃によって乱反射した赤いレーザーが良く見えた。

 マックは、確実に1人1人撃ち倒していった。

 すでに脚や背の数箇所にレーザーの直撃を喰らっていた。メタルジャケットのせいで今の所大丈夫だが、許容量を越えればメタルジャケットでも貫通されてしまう。いつまでも持つと言うものでもないのだ。

 もともと、14対1の戦いなのだ。普通は勝てる見込みなどなきに等しい。まともに戦っていられるのは、敵の実戦における未熟さとマックの自称超一流の〈何でも屋〉の腕の差、そして何と言っても運の良さであろう。

 7人目の頭を吹っ飛ばしたとき、それが戦闘に加わってきた。

 右腕のショックキャノンがきらめき、マックの周辺の地面を抉った。

 マックは爆風で飛ばされながらそれに向かってKV・320を撃ち込んだ。

 青白い電子炎束は、それの表面で空しく弾けた。

 マックの後を追うようにして次々と地面が弾けていく。

 マックは直径4メートルはある巨大な岩の影に隠れ、ショックキャノンを躱した。

 それは、全高4メートル、標準戦闘重量3.5トン、3両の重機動戦車と互角に戦ったこともあるという陸戦の黒い悪魔、ヘヴィ・パワード・スーツ、PS・3スカウツだった。

 無論、EIG社製である。

 右腕に大気圏内用であるショックキャノン・アームを取り付け、左肩に近距離用の銃身の短いブラスターキャノンを載せていた。

 対人戦闘を意識しているための軽装備らしいが、幾ら何でも1人に対して用いる装備ではない。
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