火星より愛を込めて
「ZEROコーティング!」

 次の瞬間、マックの身体は青い光に包まれた。

 ほぼ同時に、スカウツのショックキャノンがマックのいる岩を砕いた。

 光に包まれたマックが砕かれた岩影から飛び出し、宙で1回転して地上に降り立ったときには光は収縮し、輝きが失せ現れたのは、淡いブルーのプロテクターに身を包んだマックであった。

 これこそ、オーバー・テクノロジーの産物、バイオニクス・テクノロジーの粋を集めたハイパー・ウェポンスーツ・ZEROである。

 さて、今起きたことを説明すると、まず、マックがS・PACのスイッチを押すと、『ZEROコーティング』がスタンバイ状態となる。そして、マックが、『ZEROコーティング』と叫ぶと、そのときの脳波が増幅され、一種のテレパシーとなって、ジャッカルにある『ZERO粒子再生コーティング瞬送機』に届き、そこから疑似物質であるZERO粒子が瞬送されてマックの身体に吸い付き、ハイパー・ウェポンスーツZEROに再生するのである。

 ZERO粒子とは、ある特定の人間の脳波にだけ反応し、その脳波のパターンで変形する物質であり、あらかじめプログラムされた形に再生し疑似物質となる。この疑似物質は、プログラムが精密であればある程、忠実に再生された物の特性や性能を再現できた。

 その再生時間は、基準歴で約1時間。連続で『ZEROコーティング』する場合、基準歴で十分間の間隔を置かないと再生能力が回復しない。

 そして、膨大なエネルギーを消費し経費が掛かり過ぎる。マックとしてはこんな輸送の仕事で使いたくはなかった。
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