火星より愛を込めて
 が、マックはその射線の動きの1つ先を動いて躱し、プロテクターで受けた。

「ちっ!」

 マックはロングソードを収めると、今度は、右腰のホルスターに提げてあるKV・320を抜き、フルオート・モードで撃った。

 フルオート状態の強力な電子炎束が、私兵の身体を1発で吹き飛ばす。

 その1連射で、遮蔽物ごと3人が肉片となった。

 KV・320のフルオート・モードは、よほどの体格を有していないと、撃った途端に銃を持った腕が肩から外れるという、反動のほとんど無いブラスターの常識を無視したパワーを秘めていた。製造中止になった理由でもある。

 エネルギーが凝縮されて封入してある薬莢が、3つ吐き出されていた。普通のブラスターなら1つで30発撃てる代物である。

 最後の薬莢が地に落ちたとき、立っていたのはマックと粒子ビーム砲を持った男だけだった。

 距離にして20メートル、遮蔽物は無い。

 マックは、KV・320をホルスターに戻し、男に向かって地を蹴った。

 男は、向かってくるマックに撃った。

 オレンジ色の粒子ビームがマックの左脇を擦り抜ける。粒子ビーム砲は連射性が悪い、次弾の発射にコンマ何秒かのタイムラグが生じる。

 マックは、レッグプロテクターのバーニアに点火、加速、残り15メートルを一気に詰める。

 男は2発目を発射、外す。

 マックは右腕を振りかぶり、そのままスピードを殺さず右アームプロテクターの先端で男の顔を殴った。

 組み込まれたインパクトブレーカーを作動させること無く、男の頭は粉砕された。

 返り血を浴びて壮絶な姿になったマックは、余りの手応えのなさに溜め息をついた。

〈2万クレジット分の敵でもなかったなぁ〉

 淡い光を発してZERO粒子の結合が解け、ジャッカルに戻っていった。

 マックは胸部プロテクターに組み込まれていたS・PACを左手で抱え、ゆっくりとした足取りでプレートリフター発着場へ消えていった。

 後は、地球へ荷物を届けるだけであった。
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