火星より愛を込めて
4 コズミック・ダンス

地球=火星間ソル航路局設定航路

 出星手続きも手間取らなかった。メガロポリスの崩壊に伴う災害復旧のため、ポリスや災害援助物資の輸送船で火星周辺が込み入っているのでニアミスに注意するよう宇宙港のコントロールに言われただけである。もちろんエキスパート・カードの掲示だけで後はパスだ。

 火星、オリンポスシティ宇宙港を離陸すると、星系内速度一杯の船速でジャッカルを地球へ向ける。火星圏を抜けた辺りで航宙用のメインエンジンを起動、初期加速に入る。

 緑と赤茶と青の火星がみるみる小さくなっていった。

 マックは初期加速終了と同時にジャッカルをマニュアルからオートパイロットに切り替えると、シートを僅かにリクライニングさせて少し眠った。

 その間にキムは、今回の仕事の報告書をまとめていた。これによって必要経費の割り出しや、基本報酬の変更などが行われ、労働局に提出される。

 今回の場合、輸送に伴なう戦闘よりも規模が大きかったため、報酬のレベルが1ランクか2ランクほど増えそうであった。

 とは言え、まだ仕事が完了したわけではないので、経過報告のような形のものだ。

 それをジャッカルのメインコンピューターである『BEM』に記録していた。

 航路設定は、往路のようなとんでもない違法航路ではなく、天体の運行によって相対的に決定されるソル航路局が設定したものに準じたルートを使っていた。

 周囲には、幾つかの無人カーゴのキャラバンが数千キロの単位で船団を組んで航行しているぐらいだった。

 無人とは言え、キャラバンには申し訳程度に数隻の有人護衛艇が付いていた。地球=火星間の短い航路なので治安はいい。

 それでマックは、後の航行をキムとBEMに任せて一眠りしたのだが……。
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