火星より愛を込めて
 機体に衝撃が走る。

 右のウェポン・ポッドから翼端に掛けて直撃した。

 対光学系防御処理が装甲に施してあるので、装甲は完全には破られなかった。衝撃波で抉れた程度だ。

 右のウェポン・ポッドの中身は、すでに2発の亜光速ミサイルを撃ってしまっているので空だ、心配ない。

 問題は翼のほうだ。

 イーグルはその名の通り猛禽類を想像させるシルエットを持っているが、これは大気圏内で揚力を得るためばかりではない。イーグルの主翼は、慣性制御フィールド発生部になっていた。運動能力が問われるドッグファイトにおいて、ここをやられると辛い。

 視界にイエローダメージが飛び込んでくる。マックは舌打ちしてイーグルの推進軸をウインガルへ向ける。

 最大加速。

 強力な瞬発力で、ターゲットとの距離を一気に詰める。

 パッシヴセンサーが目標を捕捉、2機ともロックオン。マックは、機首に2門あるパルスレーザー機銃と機体に吊り下げた速射ブラスターを同時にシュートした。

「ひゃぁっほう!」

 マックが奇声を放つ。

 2機とイーグルが擦れ違うのと、着弾がほぼ同時だった。

 閃光。

 1つ。

 衝撃。

 警報。

 レッドダメージがマックの視覚に投影される。

 イーグルはウインガルの機首からの荷電粒子ビームで右翼を撃ち抜かれていた。

 レーダーの敵機は依然2だ。

 擦れ違いで喰らったのだった。いい腕だ。

 マックは即座に回避運動に入った。

 それと同時に機首をウインガルに向ける。

 機体が重い。

 機体構造材が軋みを上げる。

 右翼の慣性制御フィールドの出力が足りない。

 これでは間に合わない!
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