火星より愛を込めて

ジャッカル防衛戦

 キムとBEMが共同で操っているジャッカルは、最初から苦戦を強いられた。

 撃つミサイルはウインガルに撃ち落とされ、大口径ブラスターは躱される始末であった。

 船体が大きい分被弾率が高く、最初の軌道交差で、両弦の粒子ビーム砲で30メートル級機動戦闘艇を1隻航行不能にし、ウインガルを1機、絶対防衛圏に飛び込んできたところを対空レーザーで潰しただけであった。

 その間にジャッカルは30メートル級機動戦闘艇のレイルガンとミサイルで、ブラスターと右舷の粒子ビーム砲を潰され、さらにウインガルのパルスレーザーが右舷の装甲とミサイルランチャー、対空パルスレーザーを潰していった。

 お陰で右舷側の防衛圏が弱まった。

 敵の2編隊はすぐに編隊を組み直し、強力な慣性制御系にものをいわせて交差軌道から強引にジャッカルの船尾へ喰らい付き、船尾へ攻撃を始めた。

 キムは、迫り来るミサイルをBEMにありったけの対抗手段を取らせて任せ、船尾のマルチランチャーからレイルガン対策と攪乱に多弾頭型高機動ミサイルを8発撃ち、さらにチャフと融着機雷を3パック分散布した。

 外洋宇宙船としては小型の150メートル級のジャッカルだが、さらに小型で運動性能の良い機に接近戦を挑まれるとやはり弱い。

 ジャッカルの装備は本来、同級以上の艦を想定している。本来ならこういうときに威力を発揮する直衛機であるはずのミニッツとイーグルはジャッカルの防衛圏の遥か外側で足留めを喰らっている。

 今回は小型高火力であることが災いし、さらに小型高火力の機に薄い防御力を剥がされていくと言う観がある。初期段階で戦力の引き離しに成功した敵の作戦勝ちだった。

 こうなったら敵に余裕を与えないように攻撃を仕掛けて時間を稼ぐしかない。

 キムはそう判断して作戦を立て直した。
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