火星より愛を込めて
 ランチャーから放たれたミサイルから即座に1機当たり25発のアクティブ弾頭が飛び出し、計200発が敵機に襲いかかる。

 敵の戦力の中で1番怖いのはレイルガンを備えた30メートル級機動戦闘艇だ。

 ミサイルはよほどステルス性が高く、絶妙のタイミングでもないかぎりジャッカルの対抗手段であしらえる。ブラスターやレーザーなどのエネルギー兵器もシールドと装甲でいきなり致命的な打撃を喰らうことはない。亜光速ミサイルは事前に特殊なアクティブセンサーを用いるので、対抗手段がないこともない。

 しかし、レイルガンは接近戦用ではあるが、高速で打ち出される小さく重い弾体はシールドでは防ぎようがないし、大概の装甲は打ち抜いてくる。近接でしか当たらないと言うのを除けば、防ぎようがない兵器だ。

 そして、今は充分近接している。

 防ぐには弾幕を這って弾体自体を潰すのが手っ取り早いし確実だ。

 200の弾頭は半数がウインガルのパルスレーザーに打ち落とされ、残った半数が、巨大な高温圧プラズマ塊を膨らませて弾幕を張った。

 数十発のレイルガンの弾体が弾幕を破って、まさに一直線にジャッカルへ突き進んだ。

 レイルガンの1回の連続斉射はだいたい1千発。予測軌道と回避機動を計算にいれて発射される。

 ほとんどはガスになった計算だ。

 だが、その残りが怖かった。

 後は避けるだけだ。

 しかし、レイルガンの弾体は速かった。

 発射されて1秒かからずにジャッカルに到達していた。

 回避。

 ほとんどが当たらず虚空へ消える。

 2発が右のエンジンに喰らいついた。

 レッドダメージ。

 BEMが悲鳴をあげて右エンジンブロックを強制排除する。

 エンジンブロックが爆発ボルトで慣性制御フィールド外へ排除される。

 キムはさらに多弾頭高機動ミサイルを2発打ち込んだ。

 敵の編隊はチャフと融着機雷の雲の中に突入していた。

 3段構えの攻撃だ。
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