火星より愛を込めて
 最初のミサイルのせいでセンサーが攪乱された敵がさらにチャフで眩まされ、融着機雷を纏わりつかせたところで、最後のミサイルが襲いかかる。

 僅かの差でプラズマの花が膨らむ。

 ジャッカルのセンサーは、その中を突き抜けてくる2機のウインガルと1隻の30メートル級機動戦闘艇を認めた。ミサイルの高温圧プラズマ塊と機体に張り付いていたはずの無数の融着機雷の爆圧で仕留められたのは1機だけだった。

 30メートル級機動戦闘艇はレイルガンの機関部にエネルギーの再充填を完了した。

 ジャッカルの軌道計算が終了。火器管制システムがそのデータを元にレイルガンの磁発特性を微調節する。

 発射準備完了。

 発……

 コクピットのガンナーが射撃指令を送ろうとしたとき、機体を光の矢が貫き赤方偏移しながら虚空へ消えた。

 亜光速ミサイルだ。

 常識外の長射程を誇る亜光速ミサイルによる精密射撃だ。

「ひゃぁっほーっ!キム、無事だったかーっ!」

 マックの声がキムのインカムから流れてきた。

「マック、遅いですよ」

「いいタイミングだったろ」

「狙ってたんですか?」

「そうだよ」

「嘘ばっかり」

「ばれたか、残りは一気に片付けるぞ」

「了解」

 だが、マックのイーグルが直撃を受けて電子頭脳がいかれたミニッツと共にジャッカル周辺へ辿り着いたときには、その残りはいなかった。

 ジャッカルへ向かっていた2機のミニッツが漸く追い付き、ジャッカルのBEMの支援を受けてウインガルを強襲。ミニッツ1機が中破したものの全機撃墜してしまっていた。

 満身創痍のイーグルとミニッツをやはり満身創痍のジャッカルに収容し、マックはBEMに地球へ進路を取らせた。

 ジャッカルはゆっくりと進路を変え、そして地球へ向けて加速を開始した。
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