火星より愛を込めて
5 epilogue
 マックは地球中央アメリカ地区にあるジャマイカ島の最西端に位置するOUT社の開発部本部研究所ビルの最上階にあるミントのオフィスで、来客用のソファにのんびりと背を預けていた。S・PACは目の前のガラス張りのテーブルに置いてあった。

 テーブルには淹れ立てのコーヒーが、洒落たカップに満たされてゆらりと湯気を立てている。

 天然物の、工場栽培でない、天然の大地と天然の陽光の下で作られた天然のコーヒーだ。

 なかなか手に入る代物ではない。

 地元で作っているからであろう。

 魅惑的なコーヒーの香りが鼻孔をくすぐる。

 マックが気に入らないことは、ミントがまだやって来ないことぐらいである。

 もう10分近く待たされている。

 全く、企業の連中の考えることには付いて行けなかった。

 前もって引き渡しのアポを取ってあるにも拘らずわざわざ待たせるのであるからどうしようもない。

 火星から地球までの間に起きた苦労など何も感じていないのだろうと思ってコーヒーに口をつけた。

 幸い、あれ以後地球に至るまで襲撃はなく、なんとか無事に辿り着けたわけである。

 まあ、ジャッカルやイーグルの機体に関する限りは、労働局が全額負担で修理してくれるのだが(むろん、これに掛かった金額は、労働局から依頼人のほうへ、必要経費として回される)、ことこれらに付随する武装に関しては、マックの報酬から金額が差し引かれることになる。

 その額、42万クレジット。
< 40 / 44 >

この作品をシェア

pagetop